出版社/著者からの内容紹介
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著者について
1953 (昭和28) 年京都府生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院を経て、現在、京都大学大学院農学研究科教授。専門は食品・栄養化学。著書に『おいしさの科学』『食品と味』『子供を救う給食革命』(共著) など。日本栄養・食糧学会理事、日本香辛料研究会会長。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1953(昭和28)年京都府生まれ。京都大学農学部卒業、同大学院を経て、京都大学大学院農学研究科教授。専門は食品・栄養化学。日本栄養・食糧学会評議員、日本香辛料研究会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
抜粋
「違いがわかる男」というのはインスタント・コーヒーのコピーです。コクを好むということは、ネズミはコクの有無の「違いがわかる動物」だということに他なりません。
たとえばビールはドライよりもコクのある一〇〇%モルトタイプ、つまり麦汁とホップだけで造ったビールをネズミは好みます。ドライとモルトタイプのどちらがうまいと感じるか、人間ならば好みはそれぞれでしょう。しかし、ネズミはモルト好きです。本格派といっていいかもしれません。一方、清酒の場合は、癖のない飲みやすい甘口を好んで飲みます。
これらはいずれも実験で確認されている事実です。実験では、ネズミの飼育ケージにビールの入った給水瓶を二つおきます。二つの瓶には銘柄の異なるビールを入れてネズミの摂取量を比較します。
簡単なようですが、再現性のある正確なデータを得るためには条件の設定がそれなりに大変です。
実験に先立って、まず呈示した飲料などを非常に短時間で飲むように数週間ネズミを訓練します。はじめは毎日一時間ほど溶液を呈示しますが、だんだん短くしていって最終的に五分しか見せません。訓練されたネズミはおいしい餌がすぐになくなることを知っているので、あわてて飲むようになります。
五分間という短い時間に設定するのは、選択が純粋に味覚や嗅覚によるものであることを示すためです。一時間も呈示すると味わった後の消化吸収やカロリーなどの影響が顕著に出てきます。最初の五分間の摂取を比較して、たくさん飲んだ方が嗜好性が高いと推定できます。短い時間で急いで飲むのなら、おいしいと思うほうを選ぶということです。最後の晩餐ならば好きなものを死ぬほど食べるでしょうが、日々の食事ならばカロリーや体調によって食べるものが変わるというのと同じです。実際にネズミでも数時間単位での摂取量を比較すると、味プラス消化吸収以降の栄養などの要因が含まれた好みがわかります。
この実験で、食べ物でもビールや酒に対してもネズミはどうやらコクの味わいがわかることが立証されました。オールモルトのビールは、ドライよりも発酵度が低く甘口です。ドライビールは、苦味が強く、それを「キレ」と称したりするのですが、彼らの舌には合わないようです。そのため、ドライでも苦味を人工的に除去するとよりたくさん飲みます。
彼らはわれわれが嫌う日光臭など古くなったビールの匂いは平気で気にしません。人間の場合、ビールは味わうだけではなく、のどの渇きをいやすという目的も有り、好みは単純ではありません。ただわれわれがコクがあると感じるものは、そうではないものに比べてネズミも好きなのは間違いありません。しかし、ネズミに「コク」とは何かを尋ねても答えてはくれません。ネズミを使った実験の興味深い結果の数々については、後半でもっと詳しく触れます。



