内容(「BOOK」データベースより)
北国の透き通る風がはこぶ極上の物語。
内容(「MARC」データベースより)
北国の辺境の町のさらにはじっこで、こっそりやっているパン屋「麦々堂」。山小屋で静かに自然と向き合う時間と、個性的な生き方を楽しむ仲間との交友を紡いだエッセイ集。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
花房 葉子
1965年大阪府生まれ。和光大学人文学部芸術学科卒業。フリーランスで、イラストレーションやエッセイなどのライターの仕事を細々と続けながら、天然酵母パン屋のおかみ稼業、9年目。イカウシの山小屋暮らしは3年目
Creagen,Harry E.
1956年カナダ・トロント生まれ。カナダ全域、ヨーロッパ、アジア各地に移り住み、仕事や旅をする。フリーランスの写真家として北極から南極まで世界一周。また、パイプライン労働、鉱山調査官助手、重機技手、写真店経営、教職に従事。現在、教育学修士取得中。北海道美瑛町に家族と共に在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1965年大阪府生まれ。和光大学人文学部芸術学科卒業。フリーランスで、イラストレーションやエッセイなどのライターの仕事を細々と続けながら、天然酵母パン屋のおかみ稼業、9年目。イカウシの山小屋暮らしは3年目
Creagen,Harry E.
1956年カナダ・トロント生まれ。カナダ全域、ヨーロッパ、アジア各地に移り住み、仕事や旅をする。フリーランスの写真家として北極から南極まで世界一周。また、パイプライン労働、鉱山調査官助手、重機技手、写真店経営、教職に従事。現在、教育学修士取得中。北海道美瑛町に家族と共に在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
抜粋
「アガペ農園」という場所
初めてアガペ父さんが、パンを買いにきた時の事を今でもよく覚えている。もうほとんどパンがなくなった夕暮れ時に、長い髪にジョン・レノンみたいな眼鏡で、なんだか恥ずかしそうに、残ったパンを一つか二つ買ってゆく。「あの、ハーブの入ったパン、残ってますか」とやっぱり恥ずかしそうに聞いたりする。
最初から好もしいオーラを感じてはいたのだが、このヒト、いったい何者だろう、と思っていたある夕暮れ、アガペ父さんの方から「あのーワタシ、タマゴ屋なんですけど……」と名乗りでた。へー、大学の先生か、陶芸家かどちかなーと思っていたらタマゴ屋さんか、と意外な気がした。麦さんは開口一番「ウチ、タマゴはいらないわ」とすげなく言ったのであるが、タマゴ屋さんはぜんぜんめげない。「いや、いいんです、タマゴは……」なんて言ってそのつぎはアガペ母さんを連れてやってきた。
いつも気まずそうな、恥ずかしそうな態度の父さんとは対照的に初対面の母さんには度肝を抜かれた。初めて会ったのに、十年前から友達みたいなふうである。いきなり、「お茶ごっつおしてくれるかい、ここで父さんが買ってきた水車むらの紅茶がうまくてさあ、どんなカオした人が売ってんのか見に来たのさ」とか言って、さらにパンも食いたい(買いたい、じゃなくて食いたい、である)と要求する。私は、あけすけなラテン系のヒトはどうも苦手である。アガペ父さんみたいに意味もなく恥ずかしそうにしているヒトの方が好もしい。しかしアガペ母さんには、何だかうむを言わさぬものがあった。それに、よくいるずーずーしいオバサンたちとは違って、飄々としたいたずらな男の子がやってきたみたいなのである。うまいっ、うまいっ、を連発し、「あんたたち、今度ウチに遊びに来なッ」と言い残して風のように去って行った。ほとんど風の又三郎である。その後ろでアガペ父さんが「ヘンなもの連れてきてすみません、すみません」とあやまっているのがすごくおかしくて、二人が出て行ったあと、私たちはあっけにとられてしばし沈黙。そのあと大爆笑。今の、なんだったの〓?
もちろん私たちは、休みの日、すぐに旭川郊外にある当麻町イカウシという所にあるアガペ農園に遊びに行った。行かずにはいられないような何かがあった。この場所にある不思議な引力に引き寄せられるように。
まさか、その後、アガペ農園の敷地内に小屋を建てて、休みごとに通う事になろうとは。
初めてアガペ父さんが、パンを買いにきた時の事を今でもよく覚えている。もうほとんどパンがなくなった夕暮れ時に、長い髪にジョン・レノンみたいな眼鏡で、なんだか恥ずかしそうに、残ったパンを一つか二つ買ってゆく。「あの、ハーブの入ったパン、残ってますか」とやっぱり恥ずかしそうに聞いたりする。
最初から好もしいオーラを感じてはいたのだが、このヒト、いったい何者だろう、と思っていたある夕暮れ、アガペ父さんの方から「あのーワタシ、タマゴ屋なんですけど……」と名乗りでた。へー、大学の先生か、陶芸家かどちかなーと思っていたらタマゴ屋さんか、と意外な気がした。麦さんは開口一番「ウチ、タマゴはいらないわ」とすげなく言ったのであるが、タマゴ屋さんはぜんぜんめげない。「いや、いいんです、タマゴは……」なんて言ってそのつぎはアガペ母さんを連れてやってきた。
いつも気まずそうな、恥ずかしそうな態度の父さんとは対照的に初対面の母さんには度肝を抜かれた。初めて会ったのに、十年前から友達みたいなふうである。いきなり、「お茶ごっつおしてくれるかい、ここで父さんが買ってきた水車むらの紅茶がうまくてさあ、どんなカオした人が売ってんのか見に来たのさ」とか言って、さらにパンも食いたい(買いたい、じゃなくて食いたい、である)と要求する。私は、あけすけなラテン系のヒトはどうも苦手である。アガペ父さんみたいに意味もなく恥ずかしそうにしているヒトの方が好もしい。しかしアガペ母さんには、何だかうむを言わさぬものがあった。それに、よくいるずーずーしいオバサンたちとは違って、飄々としたいたずらな男の子がやってきたみたいなのである。うまいっ、うまいっ、を連発し、「あんたたち、今度ウチに遊びに来なッ」と言い残して風のように去って行った。ほとんど風の又三郎である。その後ろでアガペ父さんが「ヘンなもの連れてきてすみません、すみません」とあやまっているのがすごくおかしくて、二人が出て行ったあと、私たちはあっけにとられてしばし沈黙。そのあと大爆笑。今の、なんだったの〓?
もちろん私たちは、休みの日、すぐに旭川郊外にある当麻町イカウシという所にあるアガペ農園に遊びに行った。行かずにはいられないような何かがあった。この場所にある不思議な引力に引き寄せられるように。
まさか、その後、アガペ農園の敷地内に小屋を建てて、休みごとに通う事になろうとは。



